映画「ファーストキス」で学ぶ、夫婦の壊れ方・円満のコツ
松たか子さん主演の映画「ファーストキス 1ST KISS」。
SNSで「ケンカが多くなったり、好きだから結婚したのに相手の嫌いな点が増えてきたり、相手に期待しなくなったりしてる人は見た方がいい」的な投稿が流れてきまして、専門家として見ておかないと…と鑑賞してきました。
今回は、この映画に散りばめられている「より良い関係性を創るためのエッセンス」について、解説していきたいと思います。
※ネタバレを含みますのでご注意ください
映画「ファーストキス 1ST KISS」。
ざっとあらすじ的なことを書きますと、こんな感じです。
結婚して15年になる主人公カンナは恋愛結婚した夫との関係性が冷え切っており、もはや会話もない家庭内別居状態。
そして、離婚届を書いたその日に、夫は事故で亡くなってしまう。
しかし、とあることでカンナは15年前にタイムスリップし、若き日の夫と再会する。
再び彼に恋をしながらも、未来を変えたいと願うカンナは、ある決断にたどり着く。
愛する人を救うために、自らの「出会い」をなかったことにしようとするが――。
ここから、映画を見て、「関係性コーチの私が気づいた点」と、「より良い関係性を築くポイント」をいくつか書いていきたいと思います。
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二人の関係が破綻していった要因
いくつもの要因が複雑に絡み合ってのことだとは思いますが、下記のような描写がありました。
◆「冷たいまなざしのメガネ」を通してパートナーを見ている
「好きなところを発見しあうのが恋愛、嫌なところを見つけあうのが結婚」
「恋は盲目って言うじゃないですか。結婚は逆に解像度が上がります。見逃していた欠点が4Kで見えてきます。」
(いずれも、カンナのセリフ)
パートナーを冷たいまなざしで見るようになると、相手の悪い面ばかりに目がいき、良い面が見えなくなります。
このバイアスによって「相手は何一つ良いところがない人」と思い込み、夫婦の溝はどんどん深まってしまいます。
夫婦関係を良くしていきたいであれば、「冷たいまなざし」のメガネをかけないよう意識すること。
もしうっかりかけてしまったら、早めに気づいて「温かいまなざしのメガネ」にかけ替えることが大切です。
(参考記事:メルマガバックナンバー「夫(妻)のイヤな面ばかりが目につく」(2023/9/26))
◆「自分が正しい、あなたが間違っている」という対立が繰り返された
「恋愛感情がなくなると、結婚に正しさが持ち込まれます。正しさは離婚に繋がります」
(カンナのセリフ)
恋愛感情があってもなくても、自分にとっての「正しさ」が「絶対的なものでないこと」を理解することが、
関係性をより良くするための第一歩となります。
自分の意見が正しいと感じる一方で、相手にも同じように自分の意見や視点があります。
相手の意見を理解しようと努めることで、お互いの違いを尊重し、より深い理解と信頼を築くことができます。
(参考記事「夫の言い分と妻の言い分が異なったら」)
◆二人とも自分の内側に起きていることを適切に表現するのが苦手で、相手を傷つける言葉を発してしまう
前半、二人の仲が徐々に壊れていく場面を中心に、夫婦間に「非難」「侮辱」「防御」「逃避・無視」といった関係性を悪化させる4毒素が使われているのが観察できます。
(参考記事「離婚につながる4つのコミュニケーション」)
2人とも、自分が本当に必要としているものが何かを自覚して、相手を傷つけずにそれを伝える術を知りませんでした。
◆これ以上自分の心が傷つかないように、自分の殻に閉じこもってしまう
ケンカのシーンの後で、夫がシングルベッドを購入し、家庭内別居へ突入していきました。
この頃から二人はずっと、精神的なつながりを絶ったまま生活していたと思われます。
「結婚生活が15年で破綻」という設定がこれまた的確で、脚本家の坂元さんはもしかしてゴットマン博士の研究結果をご存じだったのでは…と思ってしまいます。
(参考記事「ケンカを避けているのに夫婦関係が改善しないあなたへ」)
二人の関係性の強み
さて、では二人の夫婦関係がダメダメで救いようがなかったかと言えば、そんなことはありません。
いくつかのシーンでは、二人の関係性の「強み」を観察することができました。
◆この夫婦独自の文化が見られる
「夫の靴下を夫婦で共用している」描写が何度も出てきました。
これは、この夫婦独自の文化といっていいと思います。
文化というと大げさに思われるかもしれませんが、「他の家庭ではあまりやっていないかもしれないけど、うちでは普通で当たり前にやっていること」というものがどの夫婦、家庭でもあると思います。
たとえば「おはよう」という朝の挨拶と同じくらい「やっと起きたー!」という挨拶をするのは、我が家の文化です。
そして、主人公夫婦の場合、この「夫の靴下を共有する文化」が離婚届を書くに至っても継続されていたことは特筆すべきと思います。
◆つながりが完全に断ち切れたとは言い難い描写があった
夫は「会社帰りに役所に離婚届を出す」と言っていましたが、実際にはコロッケ屋や本屋などに立ち寄り、役所が閉まってしまうのを狙っていたふしがあります。
一方、カンナは事故で死んでしまった夫に対して、
「家族より人様を優先して、家族を残して(死んでしまって)。私、怒ってるんだからね」というようなことを言っています。
離婚届を書いた後なのに「家族」という言葉を使っていますし、
何よりも怒りは二次感情なので、その下には悲しみや寂しさなどの感情があることがうかがえます。
このように、二人は離婚届を書いたものの、顔も見たくないほど憎しみ合っていたわけではないと思われるのです。
映画の口コミをいくつか検索してみたところ、
「離婚したのに、タイムスリップしてまた恋に落ちるのが理解できない」
という声が結構な数であるのですが、
上記のような理由で私としては「恋に落ちてもおかしくないよね」という意見です。
実際、関係性の再構築において、出会った頃のエピソードは非常に大事です。
私は関係性コーチングの事前インタビューで必ずお話をうかがいますし、
出会いの話を材料にした関係改善ワークもあるくらいです。
「15年限定」と知りながら結婚した夫は何が以前と異なったのか
最後に、終盤の結婚生活に見られた「より良い関係性を維持するコツ」をピックアップしていきたいと思います。
◆自分とは異なる、その人らしさを認めている
夫は、妻の、ある種ずぼらにすら見える面を、「正しい/間違っている」ではなく「その人らしさ」として「面白い」とポジティブに受け止めています。
そして、カンナを唯一無二の存在として大切に思っています。
ともすると、私たちは相手の欠点ばかりを見がちなことは先に述べました。
しかし、実際には「相手をどのように見るか」には選択肢があります。
相手を否定的に捉え非難するのではなく、好ましく思い、敬い、称えることで二人の間に「思いやりと感謝の心」が育ちます。
そして、「思いやりと感謝の心」には、4つの毒素を解毒する作用があります。
◆相手に関する詳細な情報を持っている
カンナの夫はパンを食べないのに、毎朝パンを食べる妻のために最新型のトースターを購入したり、
妻がテレビを見ながら「食べたい」と言った3年待ちの餃子をこっそり注文したりしていました。
相手が幸せを感じるもの、相手の生活の質に関連する詳細な情報を持っていることは、良い関係を築いていくための土台となります。
また、このような情報があるからこそ、相手に愛情や思いやりの気持ちを届けることができます。
(参考記事「これがないと夫婦関係が構築できない”土台”とは」)
◆「二人が何のために一緒になったのか」を明確に握っていた
カンナの夫は、15年後に自分が死んだとしても15年間カンナと結婚生活を送ることを選びました。
これは完全に私の憶測ですが、この15年間、「共に幸せな結婚生活を送る」という目的を彼は握り続けていたのではないかと思います。
なので、途中でケンカになったり、関係がギクシャクしたりしたときも、もう一度この目的に立ち返り、必要があればカンナにもそれを伝えて、二人でぶれずに「幸せになること」を選択し続けたのではないかと思います。
(参考記事:メルマガバックナンバー「この視点を持っている夫婦は長続きする」(2025/2/4))
…ということで、関係性コーチ的解説、お楽しみいただけましたでしょうか。
ちなみに、夫婦の関係性コーチングの事前インタビューでも、上記のように様々な角度から、ご夫婦に起きていること、お二人の強みと課題(改善点)を見立ててフィードバックしています。
このインタビュー&フィードバックは夫婦コーチングの体験セッションを兼ねておりますので、ご興味ありましたらぜひご利用ください。
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